先生が語る大人の音楽

先生が音楽について語ります。

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クリムゾン・キングの宮殿(2)

クリムゾン・キングの宮殿

「風に語りて」のエンディング。フルートのソロが消えていくと、ドラマチックに「エピタフ」のイントロが始まる。

最初に流れる印象的なサウンドは、一見オーケストラに聞こえるかもしれないが、メロトロンという楽器である。今はシンセサイザーに取って代わられたが、プログレッシブ・ロックにとっては、必須の楽器で、あるプログレのガイドには、紹介されたレコードがメロトロンを使用しているかのマークがある。つまり、プログレを聴く人は、このサウンドが好きだから聴いているといっても過言ではない。

この楽器に代表されるシンフォニックなサウンドは、イギリス発でヨーロッパ(特にイタリア)に広がっていく。ロックの歴史は、一面、黒人音楽の白人化の歴史である。イギリスのアーティストは、アメリカの黒人音楽、ブルースやR&B、ファンクにあこがれ、模倣し、結局は、そのリズム感・グルーブ感を出し切ることができず、挫折していく。能天気なアメリカ人はともかく、ロックを志すイギリス人は、黒人に対してある種のコンプレックスを持っている。

そして、黒人音楽をルーツにもつロックに、黒人には出せない何かを付け加えようとする。その一つが、クラシック的な要素である。高度な演奏テクニックとクラシック的な構成美で、つまり知性の力によって、黒人音楽が持っている原初的なエネルギーに対抗しようとした。その道しるべを示したのが、キング・クリムゾンの「エピタフ」であり、タイトル曲の「クリムゾン・キングの宮殿」である。

プログレのバンドは、ピンクフロイドなど一部のバンドを除いて、アメリカでは成功することはできなかったが、イギリスとヨーロッパ諸国では一世を風靡する。クラシックを手本にしたこともあり、だんだん無駄に長時間化していき、しだいに大袈裟なものになっていく。

ということで、ロックが本来持っていた原初的なエネルギーがだんだん失われる。やがてパンク・ムーブメントが起こり、ロックがもつ「カッコよさ」は何であり、ビートルズやストーンズが何にあこがれてギターを手にしたか、を思い起こさせた。パンクが席巻すると、プログレバンドの多くは、ライブ活動もできず、レコード会社から契約を打ち切られる。

このような歴史の一端を、この「エピタフ」という曲は担っている。とは言っても、この曲は、私にとって特別の思い入れがある。もちろん、多感な中学生の頃、レコードが擦り切れるまで(この表現も若い人にはわからないだろうなあ)聴いた思い出がある。

しかし、なんと言っても、この曲が永遠の力を持ち続けているのは、グレック・レイクのボーカルのおかげである。彼は、その後、エマーソン・レイク・アンド・パーマーというバンドを結成して、英国の人気投票ナンバーワンバンド(1年だけだけど)になる。代表作は「展覧会の絵」かな。

70年安保のとき、「エピタフ」を東京大学安田講堂に立てこもっていた学生たちが、夜中にラジカセで聴いていたそうである。夜の講堂に、「混乱こそがわが墓碑銘(エピタフ)」というレイクの叫びが響いていたと想像すると、映画のBGMのように、あまりに情景にはまりすぎて、そのリアルさにゾクゾクしてしまう。

やっぱりお葬式には、この曲をかけてもらおうかな。






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クリムゾン・キングの宮殿(1)

クリムゾン・キングの宮殿

まず第1回目。キング・クリムゾンというバンドの「クリムゾン・キングの宮殿」を取り上げる。
このアルバム。私が中学1年の頃に罹患していたビートルズ中毒から脱することができた「ありがたい」アルバムである。

従兄からクリスマスプレゼントで、このアルバムをもらった時の驚きは忘れられない。CDだとわからないが、LPの大きさで、このインパクトのジャケットである。

従兄が言うには、このアルバムは、バンドのファーストアルバムにあたり、ビートルズのラストアルバムの「アビーロード」(「レット・イット・ビー」は断じてラストアルバムではない)を、イギリスのチャートの1位から蹴落としたという。後に、それはローカルチャートで起こったことで、全英チャートでは1位にはなっていないと知ったが。

どんな素晴らしい曲が収められているのかと期待して、LPに針を落とす(若い人にこのゾクゾク感はわからないだろうなあ?)。LPのA面に3曲、B面に2曲しか入っていないのが、ちょっと気になったけど。

1曲目の「21世紀の精神異常者」でぶっとんだ。あまりにハードで、月並みだけど、脳みそに直撃するようなサウンドが鳴った。この曲は、キング・クリムゾンにとってテーマソングともいうべきもので、このオリジナル演奏といろいろなライブの音源の異常者だけを何曲も集めたCDが発売されているくらいの人気曲である。私も今、大学でイライラすることがあると、このCDに手が伸びる。

当時のロックにとって画期的だったのは、まずその歌詞である。きわめて抽象的で、もっとはっきり言えば、英国人でも何を言っているかよくわからない内容である。重要なのは、その言葉が喚起するイメージ。フレーズの強さ。この方法論は、後にヘビメタの人たちの歌詞に大きな影響を及ぼした。作詞者は、ピート・シンフィールドという人で、この人。プレーヤーではなく、作詞者としてメンバーに名を連ねている。「青い影」で有名なプロコル・ハルムのキース・リードと同じ。

もうひとつ、この曲ですごいのは、変拍子を多用したジャズ的な曲の展開である。ビートルズを聴いていたウブな私には、ちょっとだけボーカルが入って(これも音がゆがんでいて何を言っているかわからない代物)、そのあと、延々楽器によるアンサンブルが続くのが、正直退屈だった。

でも、サックス・ギター・ドラムス・ベースのアンサンブルがぴったりと合い、曲想がめくるめく移り変わっていく様は、聴きこんでみると、奇跡のような完成度である。間奏に変拍子を入れるパターンは、その後のハードロックバンド、特にヨーロッパのプログレのバンドに引き継がれていく。

ロックに一番必要なのは何か?と聞かれたら、少し考えて、疾走感と答えると思う。この疾走感を一番最初に感じたのは、この「21世紀の精神異常者」、その直後に聴いたディープ・パープルの「ハイウェイ・スター」やブルース・スプリングスティーンの「明日なき暴走」である。

ただし、私は、あらためて、今ビートルズの偉さを実感している。詞のアイディアと曲のイメージの元ネタは、実はビートルズの「ホワイト・アルバム」に収録されている「ヘルター・スケルター」にあるのではないかと思っている。ある連続殺人犯は、この「ヘルター・スケルター」を聴いたことと自分の殺人を結びつけるような証言をしている。ぜひ、この2つの曲を聴き比べて欲しい。

この騒がしくヘビーな曲が終わると、次に、フルートの調べが聞こえてきて、抒情的な「風に語りて」が始まる。完璧な構成。









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私の音楽遍歴

このブログでは、私が聞いてきた音楽について、書き綴ろうと思う。

私がはっきりと音楽の存在を意識したのは、宝塚ファンだった母が聞いていた越路吹雪。彼女が歌う「ミロール」というシャンソンが、めちゃくちゃ早口で、そのスピード感に圧倒された。

最初にのめり込んだ洋楽は、ビートルズ。小学校6年の冬に最初に買ったレコードが「レット・イット・ビー」で、日本盤を買うと2500円もした。月のお小遣いが2500円だったので、小遣いをねん出するために、輸入盤・中古盤を買っていた。中学1年の頃は、ほとんどビートルズしか聴かなかった。

最初に行ったコンサートは、中学1年のとき、武道館であったレインボーというバンドのコンサート。ディープパープルの元ギタリストのリッチー・ブラックモアが率いるバンドで、先週BSで当時のライブ映像が流れていてなつかしかった。

ビートルズ中毒から脱したのは、中学1年のクリスマスプレゼントに従兄からもらったキング・クリムゾンの「クリムゾン・キングの宮殿」。この世に、こんな音楽があったんだと驚く。
それから、受け入れられている音楽には、きっと素晴らしいところがあるんだという信念で、演歌・民謡の類は除いて、何でも音楽を聴くようになる。

キャンディーズ→松田聖子→中森明菜ときて、その後もアイドル系の音楽も聴きあさり、高校では彼女の影響で、軟弱だと無視していたオフコースに手を出し、大学ではジャズに出会い、大学院の時代にはクラシックにはまり。

大学時代の転機は、LPからCDにメディアが変わったこと。これはかなり厳しく、当時買い集めた400枚のレコードを結局すべて処分して、CDに切り替えた。

こんな感じで、今住んでいるところには、CDラックを備え付けたが、入りきらず、妻から文句を言われ続けている。それにもめげず、今でも毎月30枚のペースでアマゾンでCDを注文している。

これだけの音楽を聴いてきて思うのは、いろいろな音楽について知識と感覚で知っていると、特定の音楽を聴いた時の感動も大きいということ。ブルースを知らなくても、ローリングストーンズやクラプトンを楽しむことができるが、知っていれば、その凄さがよくわかる。

若いころは、耳に入ってくる音楽を感覚的に楽しむわけで、未だにそういう部分も大きいが、大人になってくると、そのアーティストの伝えたいこと、受けてきた影響などがよくわかり、「ニヤッと」しながら音楽を楽しむことができる。

このブログでは、そんな大人の音楽の楽しみ方(→大きなお世話)を書いていきたい。

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