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マリア・カラス「ベスト・オブ・マリア・カラス」

マリア・カラス/ベスト・オブ・マリア・カラス
このジャケットは、史上最高のプリ・マドンナ、マリア・カラスのベスト盤である。彼女以前に、彼女のようなオペラ歌手は存在しなかったし、今後絶対に彼女のようなオペラ歌手は出現しないと断言してしてしまおう。

マリア・カラスは、ギリシャ移民の子供で、それほど音楽的に恵まれた環境に育ったわけではない。彼女は、実は努力の人である。

オペラの主役を歌う女性には、大きく分けて、ソプラノ歌手とメゾソプラノ歌手がいる。もちろん、オペラの主役の多くは、ソプラノ歌手が担っている。マリア・カラスは、そもそもメゾソプラノの音域しか持っていなかった。それを、無理やり、努力によってソプラノの音域まで広げていった。彼女の全盛期は、ほんの10年ほどで、やがてソプラノの声を失ってしまう。それも仕方のないことだった。

彼女がオペラ界に残した最高の功績は、プリマドンナの概念を根本から変えた点である。それまでのオペラ歌手は、ビア樽のような体型をしていて、舞台の中央に立って、甲高い声で観客を魅了していた。「美人だ」という設定なのに、リアリティは二の次である。ところが、マリア・カラスは、本当に美しかったのである! 今のオペラ・ハウスの主役をはる人で、デブは皆無である。これは彼女のおかげである。

彼女本人ももともと太っていた。それを、身の毛もよだつ方法で、無理やりダイエットして、その体型を獲得したのである。どのようにダイエットしたのかは、ここでは書かないので、関心がある人は、ネットで調べてほしい。

マリア・カラスの当たり役には、いろいろあるが、私が一番好きなのは、椿姫のヴィオレッタである。このヴェルディの傑作オペラ。初演のときから、大ブーイングを受けていた。主人公は、高級娼婦で、肺病を患っている。強い意志と気品と、それから病から来る弱さを同時に表現しなければならない。おまけに、歌はめちゃくちゃ高度なテクニックを要求される。なのに、初演の女優は、デブで、リアリティがなかった。

まさに、マリア・カラスのためにあるような役である。ところが、この作品にかぎって、正規のスタジオ録音が残っていない。ほとんどの作品を担当している大指揮者セラフィンとマリア・カラスが音楽的な理由で喧嘩をして、録音されなかったという。ということで、オペラファンは、音の悪い実況録音盤で、我慢している。

私が最初に聞いた彼女の声は、「トスカ」だった。その前に、ガイド本などで、どんなに凄い歌手か、十分知らされていた。それでも、最初に彼女の声を聞いたときの衝撃は忘れられない。実は、このトスカについては、第2幕だけでが、チャリティコンサートで演じた映像が残されている。これは人類の宝である。もちろん白黒だが、動いている彼女を鑑賞することができる。彼女が歌っているだけではなく「演技」をしているのが、よく分かる。

政治運動をしている恋人が警察長官に逮捕される。警察長官は、人気歌手であるトスカに、自分の愛人になれば、恋人の命を助けると持ちかける。そのねちねちした脅しに翻弄されいくトスカ。そして、恋人が拷問される声を聞くに至って、承諾してまう。しかし、しかし、やはり恋人を裏切ることはできず、隙をみて、警察長官をナイフで刺して、殺害する。(映像にはないが、第3幕には悲劇的などんでん返しが待っている)

ほかにも「ノルマ」「カルメン」など、お気に入りの作品はたくさんある。しかし、まあ、オペラだから、本来は視覚的に楽しむものだし、いろいろな出演者が出てくるので、マリア・カラスだけを楽しむわけにはいかない。その点、このアルバムは、彼女の代表的な名唱が集められている。

オペラとしては演じていない作品もたくさんあるが、とくに、「ノルマ」の「清らかな女神よ」と、「サムソンとデリラ」の「あなたの声に心は開く」は、息を引き取る時に聞いていたい歌声。

マリア・カラスは、感情が激しく、恋多き女で、スキャンダラスな人生を送った。特に、ギリシャの船舶王のオナシスとの浮名は有名だったが、結局結ばれなかった。オナシスは、ケネディの元妻、ジャクリーンと結婚して、彼女の元を去る。

晩年の彼女は孤独で、パリのアパートで一人静かに息を引き取る。まだ54歳だった。椿姫のヴィオレッタは、最後には恋人の胸の中で息絶えるが、それよりも孤独な人生だったかもしれない。

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