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サニー・ボーイ・ウィリアムソンⅡ「ダウン・アンド・アウト・ブルース」

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どう? いいジャケットでしょう。なんかダルっとしていて。日がな一日、何もすることがなく、ドア先に寝っ転がっている薄汚い男。でも、全然哀れっぽい感じがしない。

これは、サニー・ボーイ・ウィリアムソンというバーブを得意とするブルースマンの「ダウン・アンド・アウト・ブルース」というアルバムで、私は長年、ジャケットに写っているのが本人だと疑わなかった。実は、本人は、結構ダンディで、ストライプのスーツにダービーハットというスタイルでステージに立っていたという。

上品に書けば、彼の人生は、ミステリアスな謎に包まれていたということになるが、早い話が嘘つきで食わせ者だった。まず、生年がわからない。1899年説、1897年説、1907年説まである。本名も不明。一応、ライス・ミラーということになっているが、本名をきかれるたびに、その時の気分で答えてきたものだから、いくつものバリエーションがある。

このサニー・ボーイ・ウィリアムソンという芸名も迷惑この上ない。実は、彼がデビューした時に、もう一人かなり有名な同名のブルースマンがいた。ライス・ミラーは、本家サニー・ボーイと活動地域がダブらないだろうと想定し、同じ名前を名乗る(普通の神経ならこんなことしないだろう?)。今では、紛らわしいので、古い方のサニー・ボーイをⅠ世。ここで取り上げている食わせ者の方をⅡ世と呼ぶことが多いが、今ではこのⅡ世の方が有名になってしまったという皮肉。

大言壮語のエピソードには事欠かない。一番有名なのは、かのロバート・ジョンソンの死に立ち会ったというもの。ロバート・ジョンソンは、何者かに毒を盛られて短い一生を終えるのだが、その日、サニー・ボーイは一緒にステージに立っていたという。客席からワインの瓶がロバートに渡された。サニー・ボーイは、ワインをロバートの手から払い落し、「栓のあいたワインなんて飲むんじゃねえ。何が入っているかわからねえぞ!」と注意したという。なのに、ロバートは次に渡されたワインを飲んでしまって、不運な死を遂げたそうな。

ただロバート・ジョンソンのまま子である、ロバート・ロックウッド・ジュニアとは親しかったのは事実で、このアルバムでもギタリストとしてジュニアは参加している。そのほか、マディ・ウォータース、ジミー・ロジャース、オーティス・スパンといったシカゴ・ブルースのオールスターメンバーが、サニー・ボーイのバックを支えている。

彼は怒りっぽく、気まぐれ。お金に汚く、人の悪口を言うのが大好きだったらしい。その彼がなぜ愛されていたのか。このアルバムに響き渡るハーモニカの音を聴けば、理解できる。彼のボーカルは、ちょっとビブラートをきかせていて、いい味を出しているが、上手いという感じではない。しかし、ハーブの音色は格別。オーケストラのバイオリンの合奏のように深い! どこで覚えたんだか、テクニックも凄い。アンプを通していない生の音だが、ニュアンスが豊かで、人間のすべての感情を表現する凄い演奏なのである。

このアルバムは、1955年から58年にかけて、チェスレコードに吹き込んだものをまとめたものだが、63年に彼は、フォークフェスティバルの一員として、ヨーロッパにはじめて渡る。おりしも、フォークブーム(ここでのフォークとは今でいうブルース)で湧いていたヨーロッパで、彼の演奏は受けまくる。彼はイギリスに残り、当時エリック・クラプトンが在籍していたヤードバーズやアニマルズと共演する。

以前書いたように、イギリスのロック・ミュージシャンには、ブラック・ミュージックに対するぬぐい難いコンプレックスがある。サニー・ボーイやジョン・リー・フッカーといったブルースマンが直接イギリスに渡り、若いロック・アーティストと共演しながら、ブルースの本質を注入・伝授したことは、その後のロックの展開を考えると、その影響はあまりに大きい。

彼は、帰国後体調がすぐれない中、ザ・バンドなどとともに、ステージをこなしていた。ザ・バンドのロビー・ロバートソンの証言によると、ステージの横にブリキ缶が置いてあり、サニー・ボーイは、血を吐きながら演奏を続けていたという。ある日、レコーディングセッションの予定が入っているにもかかわらず姿を見せないので、部屋を訪ねた仲間のミュージシャンが冷たくなっている彼を発見する。今の言葉で言うと孤独死。

はっきりとした素性もわからず、放浪を続け、いつ間にかキング・ビスケットというブルースを流すラジオ番組のDJとして一世を風靡し、レコードデビュー。ヨーロッパとアメリカを股にかけて旅を続け、多くの人を煙に巻いた男。B・B・キングのような尊敬されるミュージシャンでも、マディ・ウォータースのような大立者でもなく、胡散臭いブルースマン。

アメリカの黒人は、差別されて虐げられ搾取され抑圧されてきた。そんな教科書的な説明を超越した狡猾さ、逞しさ、気高さを彼の歌・生き方から感じる。彼は、多くのブルース・スタンダードを残しているが、その歌詞の内容は、マディ・ウォータースのようにマッチョで押しの強いものではなく、男が女に平謝りしたり、言い訳したり、懇願したりする、どうしようもなく情けないものが多い。ハーブの音色がその情けなさ、ダメさを増幅して表現する。それが、優れた芸術作品として成立するのが、ポピュラー音楽の不思議さである。

この音楽を聴いて、もう一度アルバムジャケットを眺めてみる。このアルバムの音楽、サニー・ボーイのブルースの魅力をよく表現しているジャケットだと改めて思う。

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コメント


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このジャケットをみたあとで、音楽を聴いてみると、さらにこのジャケットがこのアルバムをあらわしているということがわかるという経験は少なからずあります。

ある映像をみるときにそこに何があらわれているか知っているときにある固定した考えを持ってそれをみるとそういう風にしかみえなくなるということと同じように、その音楽を聴いたあとでは、その音楽をよくあらわしたジャケットであるようにみえるのは、似ているような気がしました。

映像はみる人が作るんだと思います。

いつも変なコメントですいません。
でも、ちゃんと更新されるとチェックしています。笑
卒業してからも毎回チェックするつもりですよ。

いとう | URL | 2007年10月05日(Fri)01:08 [EDIT]


サニー・ボーイの紹介とは!!
素晴らしいですね。

あの音、間なんて真似できないですよね。

このブログに脱帽です。クラシックは私にとって未開の地なんで、分からないですが。

紹介しているアーティストにジャンルの隔たり無いですね。

これからも楽しみにしてます。ちなみに自分が知らないの載ると悔しいっす。
クラシック以外に数枚ありました。

| URL | 2007年10月05日(Fri)07:51 [EDIT]


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クラッシックの世界 2007年10月06日(Sat) 20:45


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