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エルモア・ジェームズ「スカイ・イズ・クライング」

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今日は、エルモア・ジェームズというブルースマンを取り上げる。このアルバムは、Rhinoという初心者も通も納得の選曲で有名なレーベルから出ているベストアルバムである。

エルモア・ジェームズは、若い頃、ここでも取りあげた幻のブルースマン、ロバート・ジョンソンと出会い、彼の後について演奏を続けていた(サニー・ボーイとは違って本当の話)。このアルバムの1曲目、"Dust My Broom"は、彼の代表曲で、ここで聞こえてくるハーブは、サニー・ボーイのもの。

この曲。ロバート・ジョンソンにも同じ曲があるが、どちらが真の作曲者かは不明。ロバートの曲をエルモアが引き継いだという説が有力だが、真偽のほどはわからない。言えることは、ロバートのそばにいながら、ほとんど彼の影響を受けておらず、別のサウンドを作っていることである。

彼のブルースを特徴づけているのは、ボトルネックギター。つまりは、スライド・ギター。フレットを押さえるのではなく、スライドバーを弦の上でスライドさせて音を出す。それが瓶のクビの部分だったので、ボトルネック奏法という。現在われわれが聴いているブルースのひとつのルーツであるデルタブルースでは、サン・ハウスなど、この奏法の名手が多い。

エルモアのボトルネック奏法は、聴いてもらえばわかるが、音がキュンキュンと飛んでいく感じ。それと普通に指で押さえる奏法を組み合わせて、カッコいいサウンドを作っている。私が愛するオールマン・ブラザース・バンドのデュアン・オールマン(かの「いとしのレイラ」で必殺のスライドを披露しクラプトンを圧倒している)は、薬瓶を使ってスライドギターを弾いているが、絶対にエルモアの影響を受けている。

彼のもう一つの発明は、"Dust My Broom"で使用されて以降、彼自身様々な曲で繰り返し使っている三連符のリズムパターン。これがカッコよく、ロック畑の人たちがリフを作る時に、ちょっと拝借することが多い。

ただ、私がエルモア・ジェームズのブルースを聴くのは、彼の「殺気」に触れたいからである。ブルースマンに限らず、クラシックの世界にもロックの世界にも、相当ヤバいミュージシャンはいる。しかし、麻薬をやっていてラリラリで狂っているというのでも、ニルヴァーナのカート・コベインやニック・ドレイクのように、神経が繊細すぎて痛々しいというでもない。

エルモアの声=シャウトを聴くと味わえるのは発狂寸前の人間の怖さ。眼の前に目の据わったガッチリした体格の黒人。「これまで何人も人を殺してきました」という面持ちで、なぜかこっちをにらんで立っている。その彼が、いきなり両手を天井に向けて雄たけびを上げたかと思うと、襲いかかってくるという感じ。(全然怖くないか…)

このアルバムに収録されている"Sky is Crying", "I Need You","Something Inside Me"。どれも声がナイフのように尖っている。人間の声のような気がしない。鋭い剃刀のような声。

このボーカルスタイルは、ブルースマン以外にも、アニマルズのエリック・バートンや、ゼムで歌っていた頃のヴァン・モリソン、アメリカにわたってナヨナヨする前のロッド・スチュアートに、計り知れない影響を及ぼしている。しかし、オリジナルのエルモアを聴いてしまうと、彼らのボーカルは、みなライオンのまねを人間がしているようにしか聞こえない。

彼のボーカルには優しさのカケラもなく、曲も"Shake Your Moneymaker"である(何の事だか深く考えてはいけない)。でも、B・B・キングとは別の世界。息もできないような緊張の世界に時々浸りたくなるときがある。

夜の新幹線。ほとんど灯りの見えない景色を車窓から眺めながら、エルモア・ジェームズの叫びが闇に吸い込まれていくのを聴くのもオツなものである。

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