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ソフト・マシーン「ソフト・マシーンⅢ」

ソフト・マシーン/Ⅲ

このジャケットは、ソフト・マシーンというプログレッシブ・ロック・バンドが1970年代に発表したサード・アルバムである。LPの頃は、2枚組で4曲。つまり、1面に1曲ずつ入っていた。ソフト・マシーンという名前は、20世紀を代表する作家ウィリアム・バロウズの同名小説からとった。女性のアンドロイドのことらしい。

プログレッシブ・ロックというのは、極めてヨーロッパ的な音楽であるという話は、以前書いた。その中で、このソフト・マシーンというバンドの音楽=カンタベリー・ミュージックは、最もイングリッシュネスを感じさせるサウンドである。

ロンドンから70キロほど離れた地方都市カンタベリー。そこにあるグラマースクールに在籍していた若者たちが、ウェリントン・ハウス(18世紀の邸宅)という下宿屋を溜まり場として、1960年前後セッションを重ねていた。この邸宅には、地元の青年たちに加えて、世界中からヒッピーたちも流れついていた。

そういった交流の中から生まれたのが、ソフト・マシーンとキャラバンというカンタベリーミュージックの二大バンドである。カンタベリー・ミュージックとは何であるのかを一言で表現するのは難しいが、クラシックの要素よりはジャズの要素が強く、即興中心の演奏が繰り広げられる。メロディが不自然で、コードとリズムが複雑怪奇なところもある。

ソフト・マシーンのオリジナル・メンバーは、ロバート・ワイアット、デヴィット・アレン、ケヴィン・エアーズ、マイク・ラトリッジというメンツ。その後、激しいメンバーチェンジを繰り返していき、オリジナル・メンバーは一人抜け、二人抜けしていく。最後には、オリジナルメンバーがいなくなって、名前だけ残る。

私のアイドルであるロバート・ワイアットは、4枚目まで在籍していた。ワイアットは、ドラムスを叩いて、ヴォーカルをとっていたが、4枚目でついにヴォーカル曲はなくなった。そして、ある日他のメンバーからクビを言い渡される。ヴォーカルはいらないし、ドラムスはもっと技巧的に演奏できる人が欲しかったらしい。

このアルバムの1曲目"Facelift"は、当時のライブにおいても人気を博していた曲。クリムゾンの21世紀の精神異常者のような変拍子。キーボードとベースを中心に、轟音をかましつつ、混沌とした雑音を芸術の域に高めていく。

このアルバムのハイライトは、3曲目に収められている"Moon in June"。カンタベリー・ミュージックの最高傑作と言ってしまおう。このアルバムで唯一ヴォーカルが入る曲である。一言で言うと「せつない」。ロバート・ワイアットの声は、後に「神様の声」と呼ばれるほど、独特。別にジョニー・キャッシュの低音の魅力があるわけでも、フレディ・マーlキュリーのように大きな声量で高音が出るわけでもない。

しかし、癒される声。ちょっと切羽詰まった感じで、青春の甘酸っぱさを漂わせながら、切々と歌い上げる。もうひとつ。おそらくカンタベリー・ミュージックの共通項かもしれないのが、「浮遊感」。重心が上にあるというか、切れが悪いというか。たゆたう感じが心地よい。

このアルバムは、全英チャート18位まで上がり、彼らにとって最大のヒットとなる。バンド脱退後、ワイアットは、ソフト・マシーンと張り合う様な前衛的なファースト・ソロ・アルバムを発表。そのあと、バンド、マッチング・モール(Matching Mole)を結成する。この「そっくりモグラ」というバンド名は、ソフト・マシーンをフランス語におきかえ、その発音を英語にしたものである。つまり、なんとなくソフト・マシーンに未練があるような感じ。ここには、"Caroline"というポップな名曲が収録されている。

ところが、1973年6月に、ワイアットに悲劇が襲う。酔っ払って階段から落下。脊髄を損傷してしまい、以後、ドラムスを叩けなくなったばかりではなく、車いす生活を余儀なくされる。その中で発表された「ロックボトム」というソロアルバムは、彼の最高傑作とされている。特に、"Sea Song"は、切ないヴォーカルが印象的な名曲である。

途中、奥さんの影響もあってか、思いっきり左翼思想に染まったアルバムを発表したりもしたが、1990年代以降、「シュリープ」や「クックーランド」といった名作をコンスタントに発表している。これらのアルバムは、ちょっと神経が疲れたとき、イライラしているときに、ラックから取り出して聴くことにしている。

私にとって、"Moon in June"は、ヴォーカル部分・演奏部分・メロディ・雰囲気から言って、1曲単位でみた場合、オールタイムベスト10に入るくらい好きな曲である。大観衆の前で、ロックバンドのヴォーカルを私がやっており、この曲を歌う夢を見たことがある。
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コメント


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このCD買いました。ほんで聞きました。
最高でした。

なかい | URL | 2008年04月13日(Sun)17:54 [EDIT]


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